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柴田 敏隆(しばた としたか)さん
◆ (財)日本自然保護協会理事
 

1929年生 横須賀市で出生。
(財)日本自然保護協会理事。横須賀市博物館学芸員。(財)山階鳥類研究所資料室長を経て、フリー。
NHKテレビ「茶の間の科学」「ポケット・サイエンス」に長く出演し、ユニークな語り口で人気を博す。第9回田村賞受賞。
「かながわの鳥」「私の愛鳥講座」「ツルは何故一本足で眠るのか」「からすの早起き、すずめの寝坊」等の著作がある。横須賀市東浦賀の東叶神社の県指定天然記念物の「森をアオサギ」から守る活動で共に知恵と汗を絞り親交を深める。柴田先生のトークは何ともユニーク。早口で鳥の生態を語る姿は青年そのもの。独特な白い紙とのアンバランスがなんとも魅力的だ。ともすれば野鳥の会とか自然保護団体とは大きな距離があると思っていたが、柴田先生と接して、こうした距離は一気に解消された。一方先生も認識を新たにしたこともあったと思う。豊かな自然と生物間倫理を基軸にした次世代の為の環境を考える大きな宿題を背負った気がする。終生の友達として柴田先生の活躍を祈りたい。  

牧島: 先生の存在は自然保護協会の関係でよく承知をしていましたが、まさか一緒に活動するとは思ってもいませんでした。

柴田: 今回東叶神社の社叢林を守る活動は私にとっても貴重な体験でした。もともと県指定の原生林がアオサギのコロニーによってダメージを受けているのは知っていましたが、一方アオサギは元来里山の鳥でこうして海辺に集結すること、そのものが三浦半島の環境変化が主原因で森と鳥を守ること、この二律背反的活動を成功させるには大変なことと思っていました。

牧島: そうですね。私も1月末に地域の対策委員会に紹かれ3年越しのご苦労をお聞きし、更に山に入りその荒廃ぶりに驚きました。そこで県・市の緑政課や文化財の担当者をまきこみ協議した訳です。

柴田: なかなか行政が関与して対策を練ることは難しいことで、県も市も苦慮したと思います。

牧島: そこで先生のお考えを聞こうということになりました。

柴田: 県から依頼を受けて、実は小躍りして喜びました。過去に実施したいくつかのアイデアもありますが、新しい未だ体験のない手法も考えていましたので・・・。

牧島: それがラジコンヘリの活用ですか。先生は対策委員会で19の提案をされました。鏡をつかう。ネットを張る。放水する。爆竹を鳴らす。等の提案でした。でもどの方法も過去に実験し、問題があったり、不可能だったり、効果が小さかったり、決め手がはない。と断然されたのです。未だ実施していないのは「ラジコンヘリ」を飛行させ、コロニー解体を提案されたときはビックリしました。

アオサギを追い払うラジコンヘリ

柴田: ラジコンヘリ活用のアイデアは前からありました。しかし残念乍ら、ヘリの数は少ないし、誰がもっているかも判らないし、果して鳥を追い払う技術テクニックを持った人がいるのか、全く未知数でした。
牧島: 幸いというか不幸というか私がラジコンクラブの名誉会長をしており、早速仲間に相談し協力しようということになりました。クラブには酒井さん親子がいて酒井少年は中学3年でテクニックは全日本クラス。出撃の体勢が整いました。
柴田: 2月、3月、4月、アオサギの繁殖期、延べ200回の飛行が実施できたのも幹事の渡辺さん、酒井さん親子、地元の監視役の幸保さん達のお陰ですよ。
   


ラジコンクラブの皆さんと
牧島: 特に酒井少年はすごかった。
柴田: 天才少年ですね。あれだけもの技術の持ち主はそうはいません。アオサギの時速は約40km、ヘリは100km。追い払いのテクニックは超一流。さすがのアオサギも追々にお引越しとなりました。

牧島: それにしてもマスコミの取材はすごかったですね。NHK、テレ朝、TBSはテレビで・・・。TVKも放送しました。神奈川新聞は数回にわたって記事を載せました。

柴田: 今までアオサギとの戦いで人間が勝利した例はないですし、ラジコン活用は日本でも初めてでしたからね。

牧島: 私のところにもありましたが、ファックスやメール、電話で抗議が・・・。

柴田: 私にもそうした抗議はありましたよ。しかし天然記念物の原生林が失われ、ガケ崩れを起こす。フンの害で人々のくらしが守れない。主原因は人間の環境破壊にある訳ですが、社叢林の保護が最優先でしたので、説得や説明をしてきました。多くの方々のご理解は得られたと思いますよ。

牧島: そこで勝利宣言を

柴田: 完全勝利とはいえないでしょう。アオサギはだいたい20〜30羽が一群を形成しています。東叶神社には最盛期5群くらい営巣していましたし、又新たな一群が飛来の可能性は残っています。更に鳥には二次繁殖の能力があります。

牧島: 二次繁殖とはどういうことですか。

柴田: 鳥の習性で「たまご」や「ひな」が喪失するとすぐに繁殖するのです。琵琶湖で10,000羽駆除したら、12,000羽に増殖した例もあります。ハトやキジも2、3個卵を産みますが1個とり除くとすぐに生みます。ニワトリの擬じタマゴもこの原理を活用して卵を生ませていました。

牧島: そういわれてみれば、そうですね。

柴田: だから油断はできません。

鳥インフルエンザ対策
牧島: まだまだ戦いは続くことになりますか?

柴田: 今ではアオサギの飛来は全くありません。そうした意味では人間の知恵が勝ったことになりますが、ひきつづき対策を講ずる必要はあります。例えば効果のあったラジコンのエンジン音や、爆発音、鳥がきらいなカラスの悲鳴、ライオンのうなり声等合成音を設置したスピーカーで不定期に流すような作業が有効のように思います。


牧島: 幸いNHKの協力が得られそうなので早速サギのいやがる合成テープの制作を依頼してみます。

柴田: 是非そうして下さい。新たな挑戦ですか。鳥と人間。植物と鳥。新しい環境保護に大きな足跡を残すことになると思います。
牧島: 話しは変わりますが、今後も自然保護と環境についてはどうお考えですか。

柴田: 共生の時代と云われていますが、多様な課題があります。私は環境倫理の確立が最も重要と思っています。

牧島: 環境理論とは。

柴田: 大きく別けて生物間理論、まさに今回のサギ対策はその典型ですね。動物と植物。更に人間。こうした生物間での倫理の必要性があります。一方だけ保護すれば良いという訳ではありません。在来種と渡来種の問題も生物間倫理といえます。又、世代間倫理という問題もあります。時の経過と自然のあり方、人々のくらしと環境のあり方も変わってきます。こうした変化に対応する倫理も必要になります。
牧島: 段々難しくなりましたが。

柴田: 自分達の身の回り。体験の倫理感から云えばある種宗教感にもつながります。キリスト教の聖者やイスラムの経典(コーラン)には「森」の存在がありません。私達のくらしの原点は「森」「水」です。だから身の回りの環境倫理は「森」「水」をまもることになると思います。

牧島: 確かに鎮守の森は私達の原点のような気もします。更に緑したたる私達の国、ふるさとと云えるでしょう。
これからもお元気で頑張って下さい。

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