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薛 栄興 (勢津 栄興 せいつ えいこう )さん
 いかにもアメリカ人、いかにもスペイン人、いかにも日本人、いかにも中国人。人々の見方に多少のずれがあっても、いかにもといった人はいるものである。薛さんはそんな一人である。ふくよかな顔だち、おっとりとした大陸的なものごし。満面の笑みのなかにキラリと光る細い目、その目も相手と正対すると瞬時にしておだやか。横浜市初の料理人としてマイスターの称号をもつ、中華の超人薛栄興さんを紹介したい。
 

牧島: 勢津さんは福建省出身とお聞きしていますが。

勢津: 父が福建から日本にきました。気仙沼で中国料理の店をひらいていました。 私が昭和15年の生まれです。ですから宮城県生まれの福建人です。 県立黒川高校を卒業後、気仙沼の福建楼で修業をしました。

牧島: 中華料理一筋40年の歴史ですね。

勢津: 横浜マイスターを授かりましたし、県中日調理師会の会長やメルパルクの総料理長として頑張れるのも皆様のお蔭です。

牧島: 自分のお店も。

勢津: 中華街、陽華楼の斜め前で接筵という店のオーナーシェフです。

牧島: 接筵の料理は最高との評判ですね。

勢津: 本当に料理を楽しんでくれるお客様が多いので嬉しい限りです。

牧島: 先日もメルパルクで林訓美さん、陳建一さんと勢津さんで3人の料理ショーが開かれましたが。

勢津: この3人で全国まわっています。陳さんや林さんは料理界のスターですからね。

牧島: 勢津さんはこの二人をたばねている兄貴分というところですか。

勢津: 兄貴分というより、この二人の先輩ですから。

牧島: お二人とも勢津さんには一目おいていますよ。それはすぐに解ります。

勢津: 私は料理で対決とか争うのは好きでないのです。TVで勝ち負けは性に合いません。ですから鉄人には出場しませんでした。「どっちの料理ショー」には出ましたが。

牧島: 出版の方もいずれかは。

勢津: 読売新聞に北京の家庭料理を連載させていただきました。10月には自叙伝の出版も計画しています。

牧島: それは楽しみですね。ところで私達は中国料理にも地方の独自性があるような気がしますが。

勢津: 日本にも郷土料理があるように、もちろん中国料理にもそれぞれの特色があります。

牧島: どんなところに注目したらよいですか。料理人として、その違いをどうとらえてしますか。

勢津: 私の出身の福建料理は、海の幸に恵まれていますから。基本的に魚介類が中心になります。福建では「仏跳A」(ふうてんちゃん)という漢方、薬膳料理があります。簡単にいえば仏様もぶっとぶという意味でしょうか。

牧島: それはすごいですね。仏様がありがたがり、あまりの旨さにとびはねる、中国的表現ですね。

勢津: でも大げさでなく、身体に良い料理なのです。四川料理は香辛料が決め手です。

牧島: マーボー豆腐がそうですね。

勢津: 陳さんのおかげで一躍マーボーが有名になってしまいましたね。広東料理はスープが特徴です。

牧島: 四川と対極にある、おだやかな料理のような感じをもちます。

勢津: 上海料理はしょうゆを利用した煮込みが特徴ですね。台湾料理は家庭用の料理と考えた方がよいでしょう。北京料理は皇延料理高級料理のイメージがありますが、おおむねそのとおりです。

牧島: ところで中華といえばフカヒレとなりますが。

勢津: フカヒレは無味無臭のせんいと軟骨なのです。味がなくて、臭いもないとなればあとは料理人の腕次第です。もっともコックの実力が試される素材ですね。

牧島: そうなれば勢津さんの口ぐせである、料理は素材と基本、後はその人のオリジナルという哲学にマッチするのがフカヒレということになりますね。

勢津: そのとおりです。中国料理の原点はフカヒレということです。

牧島: 最近気になるのは中華街のブタマンブームですが、どう思いますか。

勢津: クリーン・チャイナタウンの目指す中華街にとって難しい問題ですね。ブタマンを歩きながら食べる、ゴミを捨てる、道路に座って食べる、いずれも中華街にとってプラスにはなりません。

牧島: 不景気のせいか、ブタマン食べて中華料理に満足したでは、シャレにんなりませんし、お店にも影響があるのでは。

勢津: あるかも知れませんね。ブタマン2つたべたら、もうお店には入りませんからね。いずれにしてもクリーンな中華街のため、どうするか皆で考えます。

牧島: 先日メルパルクでの第51回の中華夕べはすばらしい作品のオンパレードでしたね。

勢津: おかげ様で1回8品目、51回を重ねても一度も同じ料理は出していません。もう400位の料理をつくったことになります。このプロデュースはこれからも続けたいと思っています。この企画は若い料理人にとっては登龍門なのです。人材育成のためにも、もっと多くのファンの方をお招きしたいですね。

牧島: これからも中華街のドンとして頑張って下さい。

 
 料理にかける情熱と旺盛な研究心には、いつもながら驚かされる。きっと輝かしい経歴の裏に、ひと知れぬ影の部分ががあったに違いない。人なりの苦労だけでは、あの人間的な味わいはでないものだ。最近しきりに若手の育成を口にする。勢津さん、まだまだふけこむ年令じゃない。グルメ最前線での更なる活躍を祈りたい。

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