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海洋アスリート 荒木汰久治(あらきたくじ)さん
『海は先生!』

 32才の荒木汰久治の眸はまるで南国の海のような透明な輝きに満ちていた。

 150日におよぶスターナビ航海、ホクレア号から上陸したその日、その輝きは一層深みを増していた。 文明万能の今、古代船の航海は冒険の域を超え、無謀とさえ評論された。 古代カヌーはハワイで建造された。

 荒木汰久治はこう語った。

  ハワイアンのアイデンティティーはどこにあるのか?自分たちの祖先は一体どこから来たのか?どうやってハワイに定着したのか?そしてハワイの文化をどうやって創り上げたのか?これから私達は何を求めて、どう生きるべきなのか ?
 答えを導くことが困難であればこそ、その道をなぞらなければならない。それこそ今ハワイで生きる我々がチャレンジしなければならないことなのだ。

 歴史をさかのぼり、古代の社会のなかでカヌーの果たした役割はハワイ文化の主役であった。ハワイアンは古代のカヌーを建造し、古代人と同様に、スターナビにより航海することで、自らの存在を確認することに全霊を注いできた。

  潮の流れに帆を張り、風を仲間に、星によって進路を決めていく。動力は無し、計器も無い。人が自然と対等に対峙し、その優しさに心を開き、その厳しさに耐え抜いて果てしない海を往く。これ以上単純で純粋な行動は他には例をみない。

 ホクレア号はインドネシア、ミクロネシアの島々を訪れ、その原点を探り、航海を継続してきた。

 数年前から日本への航海はテーマに挙げられていた。その理由として「古代船カヌー建造の技術は日本から学んだことが基本になっている」という発言があったことによる。

 荒木汰久治は決意する。

 日本の技術を評価し、更にその評価を検証し、ハワイに移民として渡り苦労の連続に耐え頑張ってきた人々の郷里を訪問し、交流することはハワイアンの成すべき活動の重要な一つであった。
併せて日米の不幸な時代をしっかり見届け、更に平和への憧憬を確認するこうした航海にクルーとして乗船することが出来るなら絶対に乗りたいし、クルーの一員として日本人の誇りを彼らと共有したい。

  荒木汰久治はハワイに渡り、半年にわたる訓練に参加する。古代舟「海人丸」 ( うみんちゅ丸 ) で航海した沖縄糸満から万博 ( 愛知県 ) までの航海体験の評価は高く、ライフセイバーとして荒木汰久治の知名度もあった。

 それでも訓練は厳しく、改めてクルーは家族であることを認識したと言う。

 船長は親、クルーは兄弟!荒木は人間の絆こそ自然と対話する原点であることを心に刻むのであった。

 荒木汰久治はホクレア号について熱く語る。

  ホクレア号は全長19m、船の巾は5.3m。クルーは平均11、12名、船に屋根はなく眠る為に小さなテントを張りそこで眠る。眠るというより身体を横にするだけ。トイレも無く、食事も魚を釣り食料を確保した。
 航海計器はなく、スターナビゲーションで船は動く。星、月の動き、風や海鳥の様子を探ることが針路を決める。只、嵐や霧で星、月が確認できぬ時は船は針路を失い、海のなすがまま。船長の経験のみに船の行方はまかされる。

 ホクレア号の船長はナイノア・トンプソン。ハワイの英雄である。海洋国家であるハワイでは海を愛し、海から学び、海に挑む男こそが人々の尊敬を集め、ヒーローとして称賛される。

 日本も四面海に囲まれる海洋国家であることは論を待たない。海の文化や環境、海の資源、どれをとっても日本の将来に大きく関与する。しかし人々の目は海をみつめることはない。海に対する尊厳も優しさも、国そして国民が自覚していることはない。淋しい海洋国家と言わざるを得ない。

 荒木汰久治は次の行動についてこう語る。

 海人丸とホクレアのクルーが出会ったとき、その小ささに彼らは驚き、本当に糸満から愛知まで航海したのかと感動していました。僕は再度、海人の航海を計画し、子供達に感動を体感することを実践していきます。

 当然のこととしてホクレアの航海で学んだことを広く知らしめる事業も続けていきたいと考えています。それに葉山の大浜で実行するアウトリガーの日本選手権も引き続き開いていきます。

 アウトリガーもハワイ生まれの競技です。可能なら葉山をハワイに次ぐアウトリガーのメッカにしたいという想いを町や県、学校関係者と共同で創り上げたいと熱望しています。人間の力の限界を海から学ぶことは人生の指標に必ず大きな糧になるものと考えています。それだからこそ海は先生と僕は信じているのです。

 ひたむきで真剣。今、最も失われつつある最も大切なものを荒木汰久治は気負いもなく、ためらいもなく、誇張することもなく淡々と語る。

 きっと海の圧倒的なスケールと自然の犯し難いエネルギーが人間を謙虚にさせるのだろうと思った。

 汗を流すこともなく、学びの姿勢もなく、人の話しに耳を傾けることもなく、時流に逆らうこともなく、マスコミを利用するテクニックに長じた人々が主流になる昨今、荒木汰久治の生き方こそ、現代社会の中で評価していかなければならない。

 海から学んだ荒木汰久治を学ぶこと。私たちも謙虚で澄んだ心を持ち合わせたい。

 荒木汰久治の爽やかな風が日本中に、世界中に吹きわたることを心から祈りたい。

荒木汰久治さんのホームページ http://www.arakitakuji.com/
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